どんなに頑張ってもどうしようもならないこと ~病気や害虫を抑えきれない理由~

 我が家のりんご園は3カ所に分かれてありまして、自宅裏に130アール、車で3分位のところに30アール、同じく5分くらいの所に40アールに分けてあります。 
 理由は霜や台風などによる気象災害の危険分散という目的もあります。 
 ただその一か所の園地に問題が出始めてきました。その訳は病害虫の発生が他の園地に比べて著しく多くなってきたということです。

 りんご栽培の歴史は、沢山の病害や害虫を如何にして上手に抑えるかというということであったといっても過言ではないほどですが、近年“無農薬”をはじめとした過度な安全志向とあこがれで農業にチャレンジしてみたいという方が増えているようです。また、りんご農家を事情によってやめた方が、木を伐採せずにそのまましている“放任園”もところどころに出てきて近年大変問題になっています。 
 ハウス栽培のように外気を遮断しての作物作りや、種を植えて数カ月で収穫できるような作物と違い、りんごは苗木を作ってなるはじめて数個のりんごがなるまでに早くても3年、経済的に実を成らせるまでは7年以上はかかります。 
 その間私たちは大切に大切に樹を育てるわけで、その為に葉っぱや枝など細部に至るまで病害虫から守るために薬剤散布による防除をしております。現在の我が国で使われている農薬の使用基準は厳しいもので、農薬メーカーもより安全性の高いものの開発に努力しております。私はこうした厳しい基準を通った薬剤についてでも、県が指導している散布回数や10アール当たりの散布量を、徹底した“観察”と支持していただいているお客様のご理解のもとで“許容範囲”を設けて削減しております。

 それほど気を使ってりんご栽培に取り組んでもどうしようもないことは、りんご園のそばに、“あこがれ”や“趣味の延長”で庭などでほんの数本栽培してみようとすることはとてもいいことですし、そのことを通じてりんごを作る大変さに気づいていただけるとも思います。しかし、りんご農家並みの大きな面積で栽培に取りんでいる園地では、徐々に病害虫の密度が増え、りんご作りを生業にしている農家に深刻な影響を及ぼすということです。

理想とする樹形のひとつ

 写真は私が理想とする樹形のひとつで、このような樹を育てるために剪定時には枝はもちろん小さな芽をも観察して細やかな剪定をしていますし、切り口には病気が侵入しないように直ちに薬を塗って保護していますが… 
 以下の写真をご覧ください。

これは樹を腐らせる“腐らん病”。中でも太い幹を腐らせる“胴腐らん”です。


皮をめくるとすでに腐敗が…

こちらは枝を枯らす“枝腐らん”

考えに考えて数年かけて育てた枝をやむを得ず切り落とすことに。

剪定した後、病気の感染によって切り落とした大切な枝。

 このような被害が我が家の園地以外でも結構見受けられます。 
 特にこのような問題になる園地が風上にあるような場合は顕著な被害が出てきます。その結果、枝や樹を伐採せざるを得なくなり、生産量が低下し、廃園に追い込まれる事例もあります。

 以前読んだ話題の本の中に「無農薬栽培にしていると、周りの園地の虫がむしろ避難のために集まる」というような内容の文書を見たとこがありますが、虫の場合はそのようなことも考えられますが、病気はそうはいきません。

 栽培方法にはいろいろあって良いと思いますし、否定するつもりはありませんが、独りよがりにならず、周りとの協調性も大切にし、りんご作りを生業として愛情と想いをこめて作っている生産者のことも十二分に考えてほしいものだと思います。

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