りんごについて APPLE りんごの秘密 話題の“無農薬りんご”について 数年前、某テレビ番組で放送されてからすごい反響の“無農薬りんご”。 わたしにも県内外の消費者やりんご生産者などいろんな方からの問い合わせが多数寄せられています。それだけ感心が高いことなんですね。 しかもわたしのホームページ、結構、りんご生産者や行政、研究機関、市場関係者、JAの指導員なんかが見てくれているらしく、よく声を掛けていただいてます。立場的に少しは遠慮して書いてるつもりなんですが、『いろんな問題をズバリ書いてくれるのは工藤さんのホームページしかない!』なんておだてられたので、今回は、皆さんが高い関心を持っていらっしゃる“無農薬りんご”について気を使いながら紹介します。 消費者の方やマスコミ関係の方の中には、『なんでみんな無農薬で作らないんですか?』とか『一般に売られているりんごは悪』なんて過激なことをおっしゃる方もいらっしゃるみたいです。 しかも“無農薬のりんごは腐らない”とか書籍なんかでも紹介されているようですね。 それに、本県では貯蔵技術もすすんでいまして、品種によっては一年近くしっかりした品質を保てますが、こうしたりんごも腐りはしません。 この“腐らないりんご”については“日経BP”の『スチュワーデスが見える席』(仲森智博氏の記事)というコラムで興味深く紹介されておりますので是非ご一読ください。 スチュワーデスが見える席 https://xtech.nikkei.com/it/article/COLUMN/20090324/327014/ この件についてもとやかく言いませんので、みなさんが個々に判断してみてください。 それでは何枚か写真で紹介したいと思います。 こちらはモモシンクイガという害虫に食害されたりんごです。 この害虫の被害果が一個でも見つかれば、海外への輸出が出来なくなるという大変な害虫ですが、無農薬園には結構見られます。 次は、病気や虫によって葉っぱが落ちてしまったりんごの樹です。 皆さんも小学校くらいの理科の授業で習ったと思いますが、植物は葉っぱで光合成しますね。 りんごの味(甘さ)は葉っぱで作られたソルビトールが果実のなかに送り込まれて酵素の働きによって甘みのもととなる“果糖”や“しょ糖”“ブドウ糖”になりますが、その働きの元をなす葉っぱがないりんごはどうなんでしょうね? これも皆さん考えて見ましょうね。 こちらもたくさんの病気や虫がついてしまったりんごです。 ちょっとみただけで“黒星病” “輪紋病”などの重要病害が確認できます。 さて、もしこんなりんごがスーパーに並んでいたらいったいどれぐらいのかたが買い求めてくれるでしょう? 市場やJAに出荷するとすれば…というか引き取ってくれないですね。 また最近多くなってきた産直販売でもこんなりんごが送られてくればどうします? こんなんでよかったら生産者はみんなやりますよ。ホントに! “無農薬りんご”を求められる方はそのへんは充分にご理解くださっているのでしょうから別にいいですが、だからといって慣行栽培を否定されるのはいかがかなと思っています。 テレビ番組や書籍、マスコミさんの情報というのは一方通行で、見る側にグッとくるように作り上げます(私も何かと出させていただいてますのでヘタたことは言えません。マスコミの皆さんにも感謝感謝です)。じつにストーリー性があって大きくうなづきながらみてしまいます。 ただ、いくつか(本当はたくさん!!)疑問に思うことがあります。 こまかくは言いませんが、いまりんご産地ではあまりにもりんごが低価格で取引されていることから後継者も無く、管理できないということで、きれいに伐採抜根の後始末もできないですてられている“放任園”も結構見られるようになってきましたが、こうした園地はもちろん“無農薬”で、前の写真のような病害虫がたくさん着いていますが、りんごが成らないということはまずないです。 ということは必ず花が咲いているってことなんですね。 植物は、寿命が尽きるときとか、弱ったときに、次世代を残そうとして種を着けますが、種が出来るためには授粉しなければいけませんね。ということは花が咲くわけなんですね。 “放任園”の樹はほったらかしですから、かわいそうなくらい樹勢が弱った樹ばかりです。 こうした樹にはご覧のようにたわわにりんごは成っているものなのです。 放任園の様子。りんごはたわわに成っています。ということは花は咲いたってことです。 ですから“花が咲かない”ってのはありえないんですね。りんごの場合、花が咲かないのは樹勢が強い樹や、3年生未満の苗木だけなんです。 更に、花が咲いても実を結ばないことがあるのですが、これは花が“モニリア病”という病気に感染して、株ごと落ちてしまう場合です。この病気を防ぐためにも薬剤による防除は不可欠です。青森県のように雪解け水によって園地が湿っている条件では気を抜くと多発する危険性が高く、とても怖い病気なんです。 私は、いち生産者として無農薬りんごを決して頭から否定するつもりはありませんが、皆さんも冷静にしっかり判断して欲しいと思います。そして、慣行栽培も無農薬栽培も実際の目で見て、それぞれの生産者から自分の耳で話を聞いて判断していただきたいと思います。出来れば…出来ることならば、一年を通して双方の園地を見て欲しいですね。 私に云わせれば慣行栽培も“奇跡のりんご”です。すべての農家がそれぞれ想いをこめてりんごを作ってます。そして毎年毎年何らかの問題に見舞われますが、克服してきたし、克服しようとしています。 今回も気を使って書きました。 なにはともあれ青森りんごをよろしくお願いします。 一覧に戻る NEXT
数年前、某テレビ番組で放送されてからすごい反響の“無農薬りんご”。
わたしにも県内外の消費者やりんご生産者などいろんな方からの問い合わせが多数寄せられています。それだけ感心が高いことなんですね。
しかもわたしのホームページ、結構、りんご生産者や行政、研究機関、市場関係者、JAの指導員なんかが見てくれているらしく、よく声を掛けていただいてます。立場的に少しは遠慮して書いてるつもりなんですが、『いろんな問題をズバリ書いてくれるのは工藤さんのホームページしかない!』なんておだてられたので、今回は、皆さんが高い関心を持っていらっしゃる“無農薬りんご”について気を使いながら紹介します。
消費者の方やマスコミ関係の方の中には、『なんでみんな無農薬で作らないんですか?』とか『一般に売られているりんごは悪』なんて過激なことをおっしゃる方もいらっしゃるみたいです。
しかも“無農薬のりんごは腐らない”とか書籍なんかでも紹介されているようですね。
それに、本県では貯蔵技術もすすんでいまして、品種によっては一年近くしっかりした品質を保てますが、こうしたりんごも腐りはしません。
この“腐らないりんご”については“日経BP”の『スチュワーデスが見える席』(仲森智博氏の記事)というコラムで興味深く紹介されておりますので是非ご一読ください。
スチュワーデスが見える席
https://xtech.nikkei.com/it/article/COLUMN/20090324/327014/
この件についてもとやかく言いませんので、みなさんが個々に判断してみてください。
それでは何枚か写真で紹介したいと思います。
こちらはモモシンクイガという害虫に食害されたりんごです。
この害虫の被害果が一個でも見つかれば、海外への輸出が出来なくなるという大変な害虫ですが、無農薬園には結構見られます。
次は、病気や虫によって葉っぱが落ちてしまったりんごの樹です。
皆さんも小学校くらいの理科の授業で習ったと思いますが、植物は葉っぱで光合成しますね。
りんごの味(甘さ)は葉っぱで作られたソルビトールが果実のなかに送り込まれて酵素の働きによって甘みのもととなる“果糖”や“しょ糖”“ブドウ糖”になりますが、その働きの元をなす葉っぱがないりんごはどうなんでしょうね?
これも皆さん考えて見ましょうね。
こちらもたくさんの病気や虫がついてしまったりんごです。
ちょっとみただけで“黒星病” “輪紋病”などの重要病害が確認できます。
さて、もしこんなりんごがスーパーに並んでいたらいったいどれぐらいのかたが買い求めてくれるでしょう? 市場やJAに出荷するとすれば…というか引き取ってくれないですね。
また最近多くなってきた産直販売でもこんなりんごが送られてくればどうします?
こんなんでよかったら生産者はみんなやりますよ。ホントに!
“無農薬りんご”を求められる方はそのへんは充分にご理解くださっているのでしょうから別にいいですが、だからといって慣行栽培を否定されるのはいかがかなと思っています。
テレビ番組や書籍、マスコミさんの情報というのは一方通行で、見る側にグッとくるように作り上げます(私も何かと出させていただいてますのでヘタたことは言えません。マスコミの皆さんにも感謝感謝です)。じつにストーリー性があって大きくうなづきながらみてしまいます。
ただ、いくつか(本当はたくさん!!)疑問に思うことがあります。
こまかくは言いませんが、いまりんご産地ではあまりにもりんごが低価格で取引されていることから後継者も無く、管理できないということで、きれいに伐採抜根の後始末もできないですてられている“放任園”も結構見られるようになってきましたが、こうした園地はもちろん“無農薬”で、前の写真のような病害虫がたくさん着いていますが、りんごが成らないということはまずないです。
ということは必ず花が咲いているってことなんですね。
植物は、寿命が尽きるときとか、弱ったときに、次世代を残そうとして種を着けますが、種が出来るためには授粉しなければいけませんね。ということは花が咲くわけなんですね。
“放任園”の樹はほったらかしですから、かわいそうなくらい樹勢が弱った樹ばかりです。
こうした樹にはご覧のようにたわわにりんごは成っているものなのです。
放任園の様子。りんごはたわわに成っています。ということは花は咲いたってことです。
ですから“花が咲かない”ってのはありえないんですね。りんごの場合、花が咲かないのは樹勢が強い樹や、3年生未満の苗木だけなんです。
更に、花が咲いても実を結ばないことがあるのですが、これは花が“モニリア病”という病気に感染して、株ごと落ちてしまう場合です。この病気を防ぐためにも薬剤による防除は不可欠です。青森県のように雪解け水によって園地が湿っている条件では気を抜くと多発する危険性が高く、とても怖い病気なんです。
私は、いち生産者として無農薬りんごを決して頭から否定するつもりはありませんが、皆さんも冷静にしっかり判断して欲しいと思います。そして、慣行栽培も無農薬栽培も実際の目で見て、それぞれの生産者から自分の耳で話を聞いて判断していただきたいと思います。出来れば…出来ることならば、一年を通して双方の園地を見て欲しいですね。
私に云わせれば慣行栽培も“奇跡のりんご”です。すべての農家がそれぞれ想いをこめてりんごを作ってます。そして毎年毎年何らかの問題に見舞われますが、克服してきたし、克服しようとしています。
今回も気を使って書きました。
なにはともあれ青森りんごをよろしくお願いします。